この記事は2014年12月17日に地域日刊紙『大衆日報』に掲載されたものです。
コラム『おいしい おしゃべり』VOL.21 2014年12月号
世界のクリスマスのお菓子
日本のクリスマス菓子といえば、圧倒的に苺のデコレーションケーキですよね。
では、同じ日に、世界の国々では、どのようなお菓子を食べているのでしょうか?
フランスのブッシュ・ド・ノエル
ブッシュは、木や切株、ノエルはクリスマスの意味です。
その名の通り、切株そっくりのロールケーキです。
形の由来は4つの説があります。
①貧しい青年がクリスマスプレゼントを買えず恋人に薪を贈った。
②キリストの誕生をお祝いして暖炉に薪をくべて燃やした。
③クリスマスに燃やした薪の灰が厄除けになる。
④樫の薪を暖炉に燃やすと一年中無病息災で暮らせるという北欧の神話から。
私は①の貧しい青年が、せめて恋人に暖かく過ごして欲しいと願う純真で深い愛を薪に込めた説に憧れますが、どれも薪がらみという所に「暖かい冬」への祈りが感じられます。
イタリアのパネトーネ
パネトーネとは「大きなパン」という意味で、巨大なマフィンのような形です。
牛乳、卵、バターをたっぷり使った、いわゆるブリオッシュ生地に、レーズンやオレンジピール等のドライフルーツを入れて焼いた発酵菓子です。
リッチな材料配合だけに、濃厚なコクが楽しめ、しっとりふわふわの食感で、ほんのり甘いパンです。
生まれたばかりの子牛が初乳を飲んだ後の腸内物質から取り出した菌を小麦粉と混ぜて作る「パネトーネ菌」を使うのが特徴です。
ドイツのシュトレン
地下道の意味でトンネルの形に似ています。
やはり、リッチな生地配合でドライフルーツやナッツが練り込まれた、ずっしり重い発酵菓子です。
たっぷりの粉糖をまぶして真っ白に仕上げ、生まれたイエスを産着(日本で言うおくるみ)で包んでいるように見立てます。
薄くスライスして濃厚な味を楽しみながらクリスマスを迎えます。
イギリスのクリスマスプディング
ブランデーに漬け込んだドライフルーツやナッツ、スパイス、牛脂やバターを混ぜて蒸した菓子。
北欧のあちらこちらでジンジャークッキー
ヨーロッパやアメリカの各地で見られる生姜やシナモン等の香辛料を入れた焼菓子。
翌年の豊穣、無病息災を願い、人の形に作ってクリスマスツリーに飾ったりします。
いかがでしょうか。
こうしてみると、世界のクリスマスのお菓子には、ある共通点がある事に気が付きます。
世界のクリスマス菓子にみる共通点
ブッシュ・ド・ノエルは薪の形から暖炉の暖かさを連想させます。
パネトーネ、シュトレン、クリスマスプディングは、卵やバター、ナッツ等の栄養価の高い生地配合で作ったお菓子を食べる事で、冬の寒さに負けない高エネルギーを蓄えます。
そして、ジンジャークッキーに加える生姜は、体を温めます。
国やお菓子が違っても、それは、イエスキリストの誕生を祝うと同時に、家族や友人が寒い冬を暖かく過ごせるよう、幸せへの祈りが込められているのがクリスマスのお菓子だと思うのです。
ただこれは、クリスマスが寒い冬である北半球での事であって、逆にクリスマスが夏の南半球の国では、生姜を使ったお菓子を探す事はできませんでした。
それでも、ブラジルではイタリアからの移民によってパネトーネが伝承されているし、イギリスからの移民が多いオーストラリアではクリスマス・プディングが食べられていました。
冬季限定のジンジャーサブレ
美味しくて体が温まりますよ。