この記事は2017年9月21日に地域日刊紙『大衆日報』に掲載されたものです。
コラム『おいしい おしゃべり』VOL.47 2017年9月号
ある奥様達の会話
ある奥様が「胚芽を20%入れてパンを焼いたから栄養満点。」
と言いました。
すると、お隣の奥様が
「私は全粒粉100%でパンを焼いたから、こちらの方が栄養あるわよ。だって100%ですもの。」
と言いました。
さて、軍配はどちらに上がるのでしょうか?
20%と100%だけを比較すると、断然100%の方が栄養ありそうですが、答えを出すその前に、まずは、胚芽と全粒粉について整理したいと思います。
小麦の「外皮」(ふすま)とは?
小麦の粒は、「外皮」「胚芽」「胚乳」の三つからできています。
外皮は表皮や「ふすま」とも言い、粒の外側部分で、全体の15%を占めます。
固いため、小麦粉にする際に取り除かれ、家畜のエサとされてきました。
ところが、食物繊維が豊富で低糖質、低カロリーはもちろん、カルシウム、マグネシウム、鉄分、亜鉛などが主な栄養素のため、今では健康食品として注目されています。
ブランパンと呼ばれ、コンビニでは高めの値段で販売されています。
昔は人間の食べ物ではないと捨てられていたのに面白いですね。
小麦の「胚芽」とは?
胚芽とは、植物の種子に含まれていて、成長すると芽になる部分のことです。
米にも胚芽があり、精米し胚芽を取り除くと、一部がへこんだ、見慣れた米になります。
小麦の粒も同じで、製粉時に胚芽は取り除かれます。
ですが、この胚芽には、脂質、たんぱく質、ミネラル、ビタミンなど、小麦が育つための栄養が詰まっています。
ただ、この胚芽部分は、小麦の全粒のたった2%ほどしかありません。
小麦の「胚乳」とは?
残る83%の部分は胚乳ですが、ここを使って小麦粉が作られています。
外皮、胚芽、胚乳が整理できたところで、次は全粒粉です。
全粒粉とは?
小麦の粒から外皮、胚芽を取り除いてできるのが小麦粉ですが、それに対して、小麦の粒を丸ごとすりつぶして粉にした物が全粒粉です。
つまり、全粒粉には、外皮、胚芽、胚乳のすべての栄養が入っています。
全粒粉100%のパンとは、全粒粉だけで作ったパンのことです。
外皮や胚芽にはグルテンの形成を阻害する成分が含まれているため、やや固めのずっしりと重いパンになります。
栄養は摂りたい、でも、ふっくら美味しいパンを食べたいのなら、小麦粉50%、全粒粉50%のパンなど、アレンジはいくらでもできます。
結局のところ、どっちの方が栄養あるの?
さて、ここで先程の奥様方の手作りパンのお話に戻ります。
まず、栄養のある胚芽の含有量を比較してみます。
小麦粉を80%、胚芽を20%入れたパンは、粉100g中に20gの胚芽が含まれていることになります。
これは単純です。
では次に、全粒粉100%のパンです。
全粒粉100%ですから、小麦粉は混ぜません。
しかし、全粒粉自体に小麦粉の原料である胚乳は最初から含まれています。
しかも、問題の胚芽は全体のわずか2%程度しか含まれていませんから、粉100g中に胚芽は2gだけということになります。
ということは、胚芽20%のパンと全粒粉100%のパンでは、一見100%の方がとてもありがたみがありそうですが、胚芽の含有量としては、胚芽20%のパンの方が10倍も多いということになります。
但し、全粒粉には、外皮の栄養も入っていますから、ここは仲良く引き分けとしておきましょう。
「おいしいな酵素」を大切にね♡
食べ物には、「おいしいな酵素」があると思っています。
「おいしいな」「みんなで食べてたのしいな」「しあわせだな」と感じながら食べると出てくる酵素で、食べ物の消化吸収を良くしてくれるのです。
自分が食べたいと思う物を美味しく食べることも大切な栄養だと思います。
ぜひ、色々なパンを楽しんで頂きたいと思います。
あ、それから「おいしいな酵素」は私の考え方で、実際そんな名前はありませんから、他では言わないで下さいね、ここだけのお話です。
全粒粉のコッペパンに北海道小豆100%自家製こしあんをサンドしてみました♪
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