この記事は令和3年(2021年)10月10日に地域日刊紙『大衆日報』に掲載されたものです。(コラム『おいしいおしゃべりNo.96』)
「慣れ親しむ」という言葉があります。
何度も繰り返し接することで身近な物に感じることです。
このことは「味」についても言えると思います。
私が醤油会社の研究所に勤務していた頃、全国の醤油の味比べをしていた時に、私の尊敬する東北出身の研究員の方がおっしゃった言葉を今でもよく覚えています。
「自分が小さい頃から食べてきた醤油が一番美味しいと感じるものだ」
たしかに、醤油や味噌は地域によって風味がガラッと違います。
つまり、社員が10人いたら10通りの好みがあって当然であって、美味しい醤油の順番を安易に決められるものではないし競うものでもない、と私は解釈しました。
以後この言葉は、私の食の人生において大変重要なものとなりました。
「名物にうまいものなし」という言葉があります。
名物には案外美味いものがなく、名と実は必ずしも一致しないという意味ですが、食べ物屋さんの私からしたら、あまりいい感じの言葉ではありませんが、この言葉が実は先ほどの「慣れ親しむ」に関係しているのではないかと思うのです。
全国にはその土地ごとの名物があります。
地元の人が美味しいと繰り返し食べている物のことですね。
しかし、この「ご当地名物」を旅先で初めて食べる人からすると、地元の人ほどは美味しいと感じられない場合があります。
これは、「慣れ親しんだ味」であるか、そうでないかの違いだと思います。
「慣れ親しんだ味」は、「いつも変わらぬ味」であり、「ホッとする味」であり、安定感と安心感があります。
この感情が旅先で初めて食べた人には出にくいのかもしれません。
この「慣れ親しんだ味」の究極は何だかおわかりですか?
そうです、「おふくろの味」です。
究極の慣れ親しんだ味は「おふくろの味」
先日、TBSテレビ「マツコの知らない世界」に「千葉県のご当地パン」として当店の「サンオレ」が二度目の登場を果たしました。
サンオレは、丸いパンの中に自家製タマゴサラダが入った惣菜パンです。
昭和42年に発売し、今年で54年目になる超ロングセラー商品です。
親子3代で食べてくださっているお客様もいらっしゃいます。
また、初めて食べる方でも不思議と懐かしい味と感じられるお味となっております。
これからも、いつも変わらぬ味、ホッとする味を心がけ、皆様の「慣れ親しんだ味」として、安定感と安心感をご提供できますよう努力を重ねてまいります。