コラム

一級パン製造技能士って?①

この記事は2018年8月5日に地域日刊紙『大衆日報』に掲載されたものです。

 

コラム『おいしい おしゃべり』VOL.58 2018年8月号

製菓学校でも「パンは難しい」と言われていた?

パン作りって難しい?

この記事は2018年7月8日に地域日刊紙『大衆日報』に掲載されたものです。   コラム『おいしい おしゃべり』VOL.57 2018年7月号 オーブンに憧れていた思い出 私が初めてクッキーを ...

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前号では、パン作りの難しさについて触れました。

私が通っていた製菓学校では、和菓子、洋菓子、パンの授業がありました。

パンの実習の時には必ず生徒の間から、「パンは難しい」という声が聞こえてきました。

それはなぜでしょうか?

 

パン作りが難しいのは「発酵もの」だから

答えは、パンは“発酵もの”だからです。

パンは、同じ材料、同じ分量で作っても、温度、時間の違いで全く違った物ができあがります

パンは製造時間が長い上に、温度と時間の繊細な管理が最後までついて回ります

気温が高くてパン生地が過熟になりがちな真夏、逆に気温が低くてパン生地の回復が遅く乾燥しがちな真冬は特に気を遣います。

そして季節の変わり目。

パン生地は女性の肌のようにデリケートなのです。

さらに、砂糖や油脂の分量が少ないシンプルなパンや発酵の手助けをする薬品を含まない無添加パンだと余計にデリケートになります。

自然派志向の方はパンも野菜もあまり形にこだわらない方がよいかもしれませんね。

そして一口にパン製造といっても、色々な製法があり、パン工場、パン職人によっても様々です。

 

腕試しに国家試験に挑戦!

私は、自分のパン製造技術が世の中に通用するものなのか、どうなのか、ある試験に挑戦することにしました。

それが、国家資格である一級パン製造技能検定です。

合格するとパン製造に必要な技術を持つ者として認められ厚生労働大臣名で証書が交付されます。

学科と実技の両方に合格する必要がありますが問題は実技試験です。

普段、実際に、パン製造をやっている人と、そうでない人との差が出ます。

 

実技試験は6時間の長時間!

実技試験では、6時間以内に山形食パン(イギリス食パン)を4本作ります

支給された材料を指示通りに計算し、計量します。

その日の湿度や温度、室温、粉温(小麦粉の温度)などから水の温度と分量を自分で判断します。

パン生地のこね上がった時の温度を高くしたければ温かいお湯でこねるし、今日は気温が高いから・・・

と思えば氷水でこねたり、たかが水でも1℃違えば結果が違ってきます

どれだけの時間こねるかによっても結果は変わります。

私達パン職人はパン生地のこね上げ温度を1℃単位で管理します。

経験がものをいいます。

 

顔が青くなったり、赤くなったり、ハプニングの連続!

また、試験で面白いのは、小麦粉の入った2つの袋から強力粉を選び当てます

この試験内容を考えた人は面白い発想だと思いました。

一つの袋には強力粉が入っていて、別の袋には中力粉が入っています

見た目、色はほとんど変わりません。

触った手触りで判断します。

ここで間違って中力粉を選んでしまうと、ゲームオーバー、失格です。

万が一、中力粉で製造を続けても、良いパンはできず結局不合格となるでしょう。

強力粉と中力粉は微妙に手触りが違いますから、よろしければ皆さんも是非試してみて下さい。

訓練すると指先で触っただけで容易に判断できるようになります。

実技試験だけで6時間という長時間の試験ですが、気を抜くと発酵不足、発酵過多など取り返しのつかない失敗と隣り合わせの為、タイマーを片手に始終気が抜けません。

また、制限時間を超えてしまうと大きく減点となりますから、時間をどう使うか、全体的な時間配分を考えながら工程を進めていきます。

しかし、とてもシンプルな配合の為、ホイロ(二次発酵)が出にくい窯伸びがしない、などハラハラドキドキしっぱなしで、6時間後の試験終了時にはドッと疲れが出ました。

たぶん体重2kgは痩せたと思います。

そして私は、試験中に大きな失敗をおかしてしまったのです。

次号へ続きます。

シンプルな原材料で作る山型食パン(イギリス食パン)

一級パン製造技能士って?②

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山口由美子

大正3年創業 山口製菓舗 専務。1967年生まれ、おうし座。生まれも育ちも千葉県銚子。 趣味はギター弾き語りです。宜しくお願い致します\(^o^)/

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