この記事は2016年7月10日に地域日刊紙『大衆日報』に掲載されたものです。
コラム『おいしい おしゃべり』VOL.33 2016年7月号
竹久夢二ゆかりのお菓子『木の葉パン』
前回に引き続き、竹久夢二に関するお菓子についておしゃべりをさせて頂きたいと思います。
竹久夢二といえば、『美人画』や『宵待草』などの絵や詩が有名ですよね。
「待てど暮らせど来ぬ人を 宵待草のやるせなさ 今宵は月も出ぬそうな」。
前回は、ロマンチックな詩に詠われた銚子に咲く宵待草と、それを象った「宵待草木の葉パン」というお菓子のご紹介もさせて頂きました。
-
-
竹久夢二ゆかりのお菓子①
この記事は2016年6月9日に地域日刊紙『大衆日報』に掲載されたものです。 コラム『おいしい おしゃべり』VOL.32 2016年6月号 竹久夢二ゆかりのお菓子 「待てど暮らせど来ぬ人を ...
続きを見る
今回は、この宵待草木の葉パンの土台にもなった、「木の葉パン」にスポットをあててみたいと思います。
当コラムの第11回(2014年1月号)でも銚子銘菓として一度取り上げたお菓子ですが、今回は、竹久夢二ゆかりのお菓子として木の葉パンを掘り下げてみたいと思います。
-
-
銚子銘菓木の葉パン
この記事は2014年1月17日に地域日刊紙『大衆日報』に掲載されたものです。 コラム『おいしい おしゃべり』VOL.11 2014年1月号 銚子銘菓『木の葉パン』 新しい年がスタートしま ...
続きを見る
そもそも、木の葉パンとは、昔から銚子で食べられている身近なお菓子です。
銚子市内の菓子屋をはじめ飯岡町(現旭市)、波崎町(現神栖市)の近隣まで含めると現在、私が知るだけでも14店舗の菓子屋が木の葉パンの製造販売をしています。
ですが、全国的にはあまり知られていません。
と思いきや、世界的な有名人、竹久夢二の作品の中になんと「木の葉パン」が登場しているのです。
それは、夢二の作品「童話 春」(大正15年)に綴られた「クリスマスの贈物」。
物語の書き出しはこうです。
『「ねえ、かあさん」みっちゃんは、おやつのとき、二つ目の木の葉パンを半分頬ばりながら、母様にいいました。』
さあ、この木の葉パンとは果たして銚子に伝わる木の葉パンの事なのでしょうか?
もしかしたら、アンパンやジャムパンのような普通のパンの事かもしれません。
例えば、銚子以外のどこかで存在した、木の葉の形をした普通のパンという事も考えられます。
では、検証してみたいと思います。
仮に、普通のパンだとします。6歳児のみっちゃんが普通のパンを二つも食べるというのは大食いな感じで物語上、少し不自然な気がします。
それに、半分を頬ばるにしても、普通のパンでは大き過ぎてちょっと滑稽になってしまいます。
そこへいくと、銚子に伝わる木の葉パンであればクッキーのような菓子なので、小さな子供だとしても二つでも三つでも食べられます。
半分にした大きさも口に入れるのに丁度良く、小さな子供が木の葉パンを頬ばる光景が自然と目に浮かびます。
形も楕円形で淵がギザギザしているため、小さな子供の手にも持たせやすく、口の中で自然にとけるため、子供のおやつとして最適です。
これなら、女児と母の日常のシーンとして、しっくりきます。
やはり、これは、銚子に昔から伝わる木の葉パンの事に間違いない、と思うのです。
それにしても、夢二はいつ、木の葉パンを知ったのでしょうか?
銚子を訪れた事のある夢二ですから、銚子で食べた木の葉パンが気に入り、詩の中に登場させたのでしょうか・・・?
もしかしたら、宵待草の詩を書きながら、木の葉パンを食べていたかもしれません。
と想像を膨らませながら、今日も木の葉パンを焼くのであります。(笑)
竹久夢二の童話『春』と『木の葉パン』