この記事は2013年9月14日に地域日刊紙『大衆日報』に掲載されたものです。
コラム『おいしい おしゃべり』VOL.7 2013年9月号
2020年の東京オリンピック決定!
2020年夏季五輪の開催都市が東京に決まりました。
日本で56年ぶりだそうです。
56歳未満の人にとっては初めての東京オリンピック“初オリ”、となります。
56歳以上の人は“オリ2”、となります。
46歳の私は、当然、初オリ、です。
そして7年後の51歳の自分を想像したりしています。
健康でいられているか、家族はどうか、会社はどうか、銚子(市)はどうか、仮設住宅の人達はどうか・・・。
2020年という一つの特別地点ができた事によって、自分の過去を振り返り、今を見つめ、今後の目標を決めるきっかけとなっています。
みなさんはいかがでしょうか。
さて、オリンピックが決まったから、という訳ではないのですが、今号は、今年4月に開催された、菓子業界最大の祭典である、全国菓子大博覧会(別名、菓子のオリンピック)のご報告をさせて頂きたいと思います。
ひろしま菓子博2013
今回で第26回目となった全国菓子大博覧会は、「ひろしま菓子博2013」という大会名で、「世界にとどけ!笑顔を結ぶお菓子のちから」をテーマに、4/19(金)~5/12(日)の24日間、旧広島市民球場跡地で開催されました。
全国菓子大博覧会とは
全国菓子大博覧会は、お菓子の歴史と文化を後世に伝えるとともに、菓子業界・関連産業・開催地の振興を目的に、ほぼ四年に一度、全国各地で開催され、開催地には全国からお菓子が集結する「日本最大のお菓子の祭典」です。
その歩みをご説明しますと、今から128年前、明治18年の菓子税に遡ります。
菓子税とは、本来砂糖に課税されるものを、当時の諸外国との不平等条約によりこれが出来ず、その身代わりとして菓子に課されたものです。
全国の菓子業者は、これを悪税であると、菓子税撤廃運動を展開し、その結果、明治29年には、ついに菓子税は廃止に追い込まれました。
この時、培われた全国の菓子業者の連携を大事にしようと、明治43年2月に全国から300名の菓子業者が名古屋に集結しました。
そして、ここがとても誇らしいのですが、この集会で、「東京で全国規模の菓子の品評会をしよう!」と決議されたのです。
同業者のつながりを単なるノミニケーション(飲みながらコミュニケーションをとる)だけにとどめず、自分達同士の菓子の品評をしようではないか、それには日々の切磋琢磨が必要だぞ、という姿は相当恰好いいです。
翌年、明治44年4月(1911年)に東京赤坂溜池で「帝国菓子飴大品評会」が開催されました。
これが全国菓子大博覧会の第1回目です。
その後、戦争で一時中断しましたが、業界人の熱意で復活し、今回で26回目を迎えました。
102年の長い歴史のある菓子博覧会は、菓子文化としてはもちろんの事、日本の博覧会史上においても大変貴重な存在と言えます。
いつか皆さんにご紹介させて頂きたいと思っていました。
前々回の第24回(平成14年11月)は熊本で開催され私も行きました。
前回の第25回(平成20年4月)の姫路では、過去最高の入場者数となりました。
そして今回、広島で二度目となる開催は、第4回(大正10年4月)から92年ぶりとなりました。
期間中の入場者数は、80万7千人に達し、前回の姫路博に次ぐ大入りとなりました。
今回の式典では、岡本楢雄大会長(全国菓子工業組合連合会理事長)が式辞を述べ、続いて竹内泰彦実行委員会委員長(広島県菓子工業組合理事長)、湯崎英彦副大会長(広島県知事)、松井一實副大会長(広島市長)、深山英樹副大会長(広島商工会議所会頭)が挨拶し、その後、名誉総裁の三笠宮彬子女王殿下がお言葉を述べられました。
名誉総裁 彬子女王殿下のおことば
「明治44(1911)年4月、東京赤坂溜息の三会堂において「第一回帝国菓子飴大品評会」として初めて開催された菓子博が、1世紀を超える歴史を刻み、本日ここに第26回全国菓子大博覧会・広島(ひろしま菓子博2013)として開催されますことは、まことに嬉しく、喜びに堪えません。
子どものころから菓子博にはたくさんの思い出がございます。名誉総裁を務められていた父に連れられまして、岩手や熊本で開催された菓子博に伺わせていただき、初めて見る工芸菓子の素晴らしさに息をのんだことや、普段頂かないお菓子をいろいろと試食させて頂いた喜びなど、今でも記憶に残っております。長年父は、「お菓子なんて俺の柄じゃねぇから、お前に名誉総裁は譲ってやる」とおっしゃっておられましたが、昨年6月にご薨去され、正式に父の手から譲っていただくことができなかったのは残念でなりません。長年に亙り、本大会の名誉総裁をお務めになられた故高松宮殿下、そしてその高松宮殿下を尊敬してやまれなかった父の菓子博に対するお心を、微力ではございますが、引き継いでいけたらと思っております。
高松宮殿下が菓子博に寄せられたお言葉のひとつに、「伝統の和菓子が、技法に工夫を加え、成熟度を増していることと、洋菓子の分野においても、本場の技術に匹敵凌駕する格段の進歩がみられること。」があります。私は6年間英国で留学生活を送りましたが、日本のお菓子がよく恋しくなったものでした。おじさまのお言葉にもあるように、和菓子はもとより、洋菓子、スナック菓子に至るまで、日本のお菓子の質の高さは世界でも群を抜いていると思います。ただ、外国の方たちには「日本の和菓子は、見た目は本当に美しいのに、なぜ同じ味なのか」「食感が不思議で食べ辛い」などと言われることもあり、まだまだ本当の理解を得るのは難しいなとも感じました。
でも、そう思っているだけではいけないと思った出来事がありました。私が取り組んでおります子どもたちに日本文化を伝えていく活動の一環として、今、太宰府天満宮幼稚園で、地元の和菓子屋さんにご協力いただき、園児とともに和菓子作りのワークショップを行っています。最初は「あんこは好きじゃない」「和菓子はあまり食べない」と言っていた子供たちが、一連のワークショップが終わるころには、みな和菓子が大好きになっていました。子どもだから、外国人だからわからないだろうと思うのではなく、きちんと伝えていくことが大切だということを学びました。
おいしいお菓子を一口頂いた時のほっと心が穏やかになり、幸せだなと思う感覚というのは世界共通のものであると思います。本大会のテーマとなっている「世界にとどけ!笑顔をむすぶお菓子のちから」は、まさにこのことを表現しているような気が致します。この国際都市広島から、お菓子を通して平和の心が世界中に広がっていくことを祈念しつつ、私よりのご挨拶といたします。」
ひろしま菓子博のようす
彬子女王殿下のテープカットで開幕した、24日間、各パビリオンでは、様々な展示イベントが催されました。
簡単にご紹介させて頂きます。
「全国菓子めぐり館」では、全国の特色あるお菓子を地域の歴史と文化と共にわかりやすく展示しました。
「広島と世界のお菓子バザール」では、広島と世界をキーワードにした多彩な商品の試食販売をしました。
「全国お菓子バザール」では、日本全国各地の銘菓を紹介し、試食販売を行いました。
「お菓子工場」では、広島名物・もみじ饅頭の製造工程を最新式の機械生産と昔ながらの手焼き製法の二系統で公開し、見比べ、食べ比べ、焼きたてを楽しみました。
会期中、会場内は、香ばしい香りに包まれました。
「夢のお菓子ランド」では、おなじみのお菓子メーカー、グリコ、カルビー、不二家、ブルボン、明治、森永、ヤマザキ、ロッテが出展し、参加型のイベントを行いました。
「スイーツカフェ」では、地元ベーカリーのアンデルセンが広島産レモンを使った「デニッシュハート」を限定販売しました。
「森のお茶席」では、広島に家元を置く上田宗箇流によるお点前と茶席菓子が披露されました。
「お菓子のテーマ館」では、お菓子の歴史、交流、生活、文化を文献等で紹介しました。
「お菓子の学校」では、広島県内の製菓学校、企業の協力によるお菓子教室が開講され、フランスのショコラティエ、ジャンポール氏や、おなじみの辻口博啓シェフなど、国内外の有名パティシエによる特別教室も設けられました。
「お菓子美術館」には、全国から153点の花鳥風月を彩る工芸菓子(作品)が展示されました。
菊や城や鳳凰などを、菓子の素材だけで作った、日本の四季折々の景色を表現した、あれです。
このように会場では、全国のお菓子を集め、展示・販売を行いました。
また、本大会の元々の起源である、「菓子の品評会」ですが、全国から集まった菓子は、味、色彩、品格、地域性等の各項目基準ごとに審査され、優秀なお菓子には皇族による名誉総裁賞や内閣総理大臣賞などが授与されました。
銚子銘菓が快挙!いわしサブレが金賞!醤油サブレが会長賞!同時に二つの受賞!
そして今回、当店でも複数の商品が名誉ある賞を受賞致しました。
「銚子漁港いわしサブレ」が金賞を受賞
「醤油サブレ」が全国菓子大博覧会会長賞を受賞
いわしサブレも醬油サブレも、千葉、銚子の特産品を素材にしたお菓子、という点を評価をいただけたのではないかと思っております。
それにしてもこのような名誉ある賞を、二つも同時に頂けるとは思いもよりませんでした。
今後は、この賞に恥じないよう、より一層の努力を重ねながら、本大会の創始者である明治時代の大先輩方がそうであったように地域の菓子業者さん達と連携し、銚子をアピールし、地元の発展に少しでも貢献できればと思っております。
また、千葉県を代表する菓子メーカー、なごみの米屋(成田)のぴーなつ最中は名誉総裁賞を受賞するなど、全国の菓子屋さんが各賞を受賞されました。
菓子博の醍醐味
全国菓子大博覧会の面白さは何か?
それは、「菓子博ならではのお菓子に出会える事。お菓子を通して地域の特色、歴史を知れる事。菓子メーカーの社風が感じられる事。」だと思います。
4年後、2017年の開催地は、三重県津市に決定しています。
少し遠方ではありますが、宜しければ足を運ばれてはいかがでしょうか。伝統ある博覧会です。
次回は、ひろしま菓子博でも強く感じられた、地域活性化のカギともなる、地域の素材を使った「ご当地名物」について、私からの提案をお話しさせて頂きます。