この記事は2017年10月14日に地域日刊紙『大衆日報』に掲載されたものです。
コラム『おいしい おしゃべり』VOL.48 2017年10月号
最近増えた「ホイロってなんですか?」という質問
家庭でパン作りが楽しめるホームベーカリーをお持ちの方が増えました。
ホームベーカリーの魅力は、なんと言っても焼きたてが食べられる事と、自分が選んだ材料で安心なパンが作れるという事ではないでしょうか。
また、料理上手な方は、自分のオリジナルレシピでもってプロ顔負けの美味しいパンを作り、楽しまれている事と思います。
そのせいか、最近、パン製造の専門用語についてよく聞かれるようになりました。
その中でも、一番多い質問が『ホイロ』についてです。
漢字では焙煎の「焙」に焜炉(こんろ)の「炉」で「焙炉(ほいろ)」と書きます。
パンのレシピにはカタカナで「ホイロ」と書かれ、「ホイロに入れる」、「ホイロをとる」などという言い方をされる事が多いです。
では、いったいホイロとは何でしょうか?
漢字の「焙炉」から、なんとなく火を使う事が想像できると思います。
実は、「焙炉」とは、パン製造だけに使う言葉ではありません。
お煎餅生地を乾かす機械や、お茶っ葉を作る時に茶葉を乾燥させる機械も「焙炉」と言います。
お煎餅もお茶っ葉も熱を入れて乾燥させる為の機械だから、パン生地も乾燥させる?
と思うかもしれませんが、パン製造の場合のホイロは、少し違います。
と言いますか、むしろ逆です。
パン生地は乾燥させてはいけません、絶対にです!
では、パン製造におけるホイロとは、いったい何でしょう?
パンの製造工程
まず、パンの製造工程はこうです。
step
1計量
原材料・副材料を正確に計量します。
step
2ミキシング
計量した材料を混ぜてパン生地を作ります。
step
3フロアタイム(一次発酵)
パン生地を20~30分間発酵させます。
step
4分割
パン生地を製品サイズに小分けします。
step
5 丸め
分割したパン生地を一個ずつ丸めます。
step
6ベンチタイム
分割・丸めで傷んだパン生地を休ませます。
step
7成型
最終的な製品の形に整えます。
step
8 ホイロ(二次発酵)
発酵させます。
step
9 焼成
オーブンで焼きます。
step
10冷却
パンを適温まで冷まします。
という具合になります。
この工程中の⑧にホイロが登場します。
そうです、ホイロとは、発酵させる工程の事です。
一定の温度と湿度に保たれた部屋や機械その物自体をホイロと呼ぶ場合もあります。
パン製造におけるホイロの特徴は湿度管理をする、という事です。
煎餅や茶葉には湿度は要りません。
フロアタイムの一次発酵に対して、ホイロは二次発酵や最終発酵とも呼ばれます。
また、ドゥコンとホイロの違いで混乱している人も多いですが、ドゥコンとはドゥコンディショナーの略で、「ドゥ」は英語でパン生地の事で、パン生地を管理する機械がドゥコンです。
発酵機能のホイロに冷凍、冷蔵機能が加わった便利な機械の事です。
よく、「一次発酵と二次発酵の違いは何ですか?」とか、「二次発酵をしなくてもパンは作れますか?」などと質問を受けますが、それぞれの発酵には大事な意味があります。
レシピ通りにやったのに失敗する理由
また、レシピ通りに作ったけど上手にパンが焼けなかったという事もよく聞きます。
それは、世の中のほとんどのパンレシピには、一次発酵と二次発酵しか書いてないからです。
実は、材料を混ぜ合わせた瞬間からパン生地は、ゆっくりと発酵を開始しているのです。
オーブンで焼かれるまでずっと発酵し続けているのです。
パン生地は生き物なんだ、そう思いながらパンを作ると、パン生地を冷やさず、乾かさず、濡らさず、最後まで良い状態で工程をつなげる事ができます。
ホームベーカリーで上手に焼けるようになった方は、是非、手作りパンに挑戦してみて下さい。
ホイロの中のパン