この記事は2019年10月22日に地域日刊紙『大衆日報』に掲載されたものです。
コラム『おいしい おしゃべり』VOL.72 2019年10月号
いろいろな干し柿♡
実りの秋です。
特に楽しみなのが干し柿です。
これを読めば皆さんも干し柿を見る目が変わるかもしれません。(笑)
干し柿にも色々な種類があります。
「枯露柿」(ころがき)は生柿の水分が25~30%残るもの。
「あんぽ柿」は水分が50%程度だからかなりやわらかめ。
「市田柿」は品種名で長野県特産の干し柿。
干し柿すごい説その①
干し柿を調べていると、面白い事を発見しました。
柿には甘柿と渋柿がありますよね。
普通、甘柿が主流で、時たま渋柿に当たってしまう、というような感覚でいた為、歴史的にも当然甘柿の方が古いのかと思っていました。
ところが・・・・。
日本に柿が伝わったのは弥生時代です。
干し柿としては、平安時代には祭礼用の菓子としてお供えされています。
ところが、甘柿は鎌倉時代以降です。
そもそも干し柿は渋柿で作られます。
という事は、弥生時代に伝わったのは渋柿で、
「このまま食べるには美味しくないな、干してみよう」
という研究心からなのか、
「あれ?縁側に放っておいた渋柿が美味しくなってるぞ」
という偶然なのか、成り立ちは不明ですが、渋柿を干す事で「干し柿」という美味しい産物になった、というのが先で、甘柿は、それとは別に品種改良(当時に品種改良という言い方はなかったと思いますが)しながら、作られていったのかなと思います。
もともと、日本に柿が伝わった頃には渋柿という言い方さえなかったかもしれません。
柿はもともと渋い物であり、後に登場する甘柿と区別する為に初めて渋柿と呼ぶようになったのではないかと思います。
そう考えると、日本では美味しく食べていた柿は生の柿ではなく、干し柿が元祖ということになります。
干し柿、すごくないですか?
干し柿すごい説その②
また、『和生菓子の甘さは干し柿をもって最上とする』という言い回しがあります。
和菓子を作る時には、干し柿の甘さを基準にするといいですよ、という意味です。
伝統菓子である和菓子の、更にその上をいくお手本となる甘味であるという事は、干し柿がいかに古くからあったかという事と、自然が作り出した甘さを超える美味しさはない、という証だと思います。
菓子のはじまりは果物
また、和菓子のルーツをたどると、古代人にとっての菓子は、天然の果物や木の実であり「果子」であったと考えられています。
「菓子」は「果子」という字からきています。
今で言う「みかん」が菓子の始まりと言われています。
また、果物である柿も重要な「果子」であったに違いありません。
今年は大嘗祭の年
また、宮中儀式の新嘗祭(にいなめさい)では、毎年11月23日に五穀の収穫に感謝し、干し柿も供えられます。
今では勤労感謝の日になっていますが、昔は「新嘗祭」という祭日でした。
そして、天皇が即位の礼の後に初めて行う新嘗祭を大嘗祭(だいじょうさい)といいます。
まさに、今月、天皇陛下の御即位を広く披露するための即位の礼が、10月22日(火)から31日(木)までの間、国の儀式として行われます。
ですので、来月11月23日の新嘗祭は、大嘗祭となります。
手間暇もかかり乾燥具合が難しい干し柿
これからも日本の味として受け継いでほしいです(^_-)-☆