この記事は2018年2月6日に地域日刊紙『大衆日報』に掲載されたものです。
コラム『おいしい おしゃべり』VOL.52 2018年2月号
天然酵母のイメージは?
天然酵母パンに対してどのようなイメージをお持ちでしょうか?
天然の酵母を使って発酵させたパン。
時間と手間をかけて作られたこだわりのパン。
無添加で安全なパン。
こんな感じでしょうか。
では、イーストのイメージは?
イーストも天然って知ってた?
そもそもパン作りに欠かせない「酵母」は、微生物で、自然界の色々な所に生息しています。
ブドウやリンゴなどの果物や穀物などにも付着していますし、海水にも存在します。
ですから、酵母は天然物でしかありえません。
天然酵母はもちろん、イーストだって天然物なのです。
おいおいちょっと待って、イーストは工業的に作られているんだから天然物とは言えないよね?
と思われたかもしれません。
丁寧に言うと、「イーストは自然界に存在する天然酵母を採ってきて、パン酵母として優れた活躍をする酵母を一種類だけに絞り込み培養した物」となります。
根源は天然であり、製法は人工とでも言いましょうか。
手間のかかる「天然酵母培養」を便利にしたのが「イースト」
ブドウを水に漬けて培養した液に、小麦粉を混ぜて発酵させるとパン生地ができます。
これがいわゆる天然酵母パンとなります。
ただ実際には、このままだと発酵力が弱いので培養液に小麦粉を混ぜて発酵させる工程を数回繰り返します。
また、酵母を元気に活動させるために温度を30度前後に保たねばなりません。
このように天然酵母パン作りは時間と手間がかかります。
ある程度の経験と知識が必要で、慣れないと思うように培養液が作れず失敗する場合もあります。
そこで世に登場したのが、「イースト」です。
イーストは、パン作りに適した酵母だけをチョイスして培養されていますから、発酵力が強く天然酵母のように発酵に時間もかかりませんし、自分で培養する手間も要りません。
イーストも自然界に存在する酵母を原料としていますから天然物に変わりはありません。
天然酵母に対し、イーストを「人工的で体に良くないのでは?」というイメージは間違いです。
ならば、天然酵母とイーストの違いは、呼び名だけでしょうか?
酵母を英語で言うとイーストですしね。
では、天然酵母パンの特徴を述べたいと思います。
①天然酵母は無選別かつ無限な酵母である
イーストはパン作りに最適な一種類の酵母だけを培養しているのに対し、天然酵母は自然界の酵母を選別せずにありのまま培養しているため、無限の種類から成る複合酵母からは深い風味が得られる。
②使う酵母によって独特の異なる風味が楽しめる
ブドウ種、リンゴ種、小麦粉種など、酵母種によって香り、味が変わる。
以上の2点が天然酵母ならではの特徴だと思います。
天然酵母には2タイプある
そして、天然酵母には、天然酵母専門店から種を購入するタイプと、「自家培養」タイプがあります。
自家培養タイプとは、例えば私が果物から酵母種を起こした場合などです。
また、天然酵母で作ったパンとイーストで作ったパンとで、どちらが安全か、体に良いか、などと比較することはできません。
原材料に何を使うか、どのように作るかが大切だからです。
当店の商品『天然酵母のパン』
当店の天然酵母食パンは、長年酵母種を継いで作っています。
自然の甘さと風味が人気です。ぜひお試し下さいませ。