この記事は2017年4月16日に地域日刊紙『大衆日報』に掲載されたものです。
コラム『おいしい おしゃべり』VOL.42 2017年4月号
カステラ屋さんで切れ端が人気
カステラの切れ端って美味しいですよね。
と、言うよりも、むしろ、カステラは切れ端の方が美味しいと感じませんか?
県内にあるカステラ屋さんのご主人から、「切れ端の売れ行きがメインで困る」と聞いた事があります。
これは、切れ端は値段が安いからお買い得という理由も、もちろんありますが、その上、切れ端が美味しいから良く売れるのだと思います。
では、なぜ、切れ端は美味しいのでしょうか?
切れ端は形や味が均一ではない
「蜂蜜やザラメ等のうまみ成分が端っこにたまるから」という説明をされている方もおりますが、今回は、私なりの「カステラの切れ端が美味しい理由」を探ってみることにしました。
まず、カステラは大きな正方形の木枠に生地(和菓子用語では種“たね”)を流し、焼いていきます。
上面には、こんがり焼き色が付きます。
焼きあがったカステラは、木枠からはずし、四隅を切り落としてから、長方形にカットして製品にします。
この時、切り落とされた四隅の部分が、今回テーマの切れ端となります。
想像して頂きたいのですが、木枠から外したばかりのカステラの端は、どうなっていると思いますか?
包丁でスパッと切ったようなきれいな切り口にはなっていませんよね?
木枠の跡がついていたり、良く見るとデコボコしていたりします。
厚みのある木枠で焼いた時は、蒸し焼き風に湿気のある部分もあったり、ステンレス製の型で焼いた時は、焦げ目が付いていたりと、いずれにしても、中央部分の安定した生地相から比較して、食感、味が均一でないのです。
もっと身近な物で言うと、厚焼き玉子を作り、冷めてから包丁でカットします。
中央部分の玉子焼きと端っこの玉子焼きでは、食感が違いますよね。
端っこは、弾力のある所、ない所、焦げ目のある所、ない所が入り混じっているのです。
結局のところ、端っことは、そういう部分なのです。
均一な食感を食べ続けるより、色々な食感がある方が味のコントラストが出て、美味しいと感じるのだと思います。
また、切れ端のお買い得品には、薄っぺらい物がギュッと詰まっていたりもします。
その場合、カステラの上部の焼き色が濃い部分だけを指でつまんで食べる事もあるでしょう。
その時は香ばしさが際立ちますし、場合によっては、ざらめ付きだったりすると、甘い部分だけを食べる事もあるでしょう。
甘ければ、美味しいと感じ、「カステラの切れ端は美味しい」と記憶に残ります。
以上の理由から、カステラの切れ端は美味しいのだと思います。
ちなみに、煎餅の久助(こわれ品)が美味しいのは、割れて表面積が増えた分、醤油が絡み、味が濃くなるからで、トンカツの端が美味しいのは、一番最初に食べるからです。
あくまでも、私の見解ですが・・・・。(笑)
当店でも、時々、パウンドケーキの切れ端があります。
あればラッキーです。お試し下さい。