この記事は2013年5月17日に地域日刊紙『大衆日報』に掲載されたものです。
コラム『おいしい おしゃべり』VOL.3 2013年5月号
「キャラメル」と「カラメル」と「かるめら」と「かるめ」のお話
今回のお話は、カラメルとかるめらです。
よく見て下さいね。同じではありませんよ。(笑)
そして更にヤヤコシイのですが、もう少し広げて「キャラメル」と「カラメル」と「かるめら」と「かるめ」というテーマでお話したいと思います。
まず、それぞれの言葉の意味ですが、キャラメルとは、牛乳や生クリームを砂糖、水飴、バター等と混ぜ、煮詰めて冷やし固めたソフトキャンディの事。
カラメルとは、砂糖と水を熱した液体の事。
ここで砂糖の特性のお話をちょっと。
砂糖は、水と混ぜて熱すると温度によって変化し、呼び名も違ってきます。
105度でシロップになり、110~120度まで上げて急に冷ますとフォンダン(お菓子にかけるアイシングのような白い砂糖衣)になり、150~160度に上げて急に冷ますとべっこう飴になり、180度以上に上げると濃い茶色になりカラメルとなります。
これにお湯を加えてのばすとプリンに使うカラメルソースになります。
キャラメルとカラメルの説明が終わりました。
では残るは、かるめらとかるめです。
かるめらは、砂糖を煮詰めて膨らませた駄菓子の事。
かるめら焼き、かるめ焼きとも言います。
「軽目焼き」と書く時もあるようです。
砂糖をブクブク膨らませ、軽石のように軽めのお菓子にできるから、あて字も迷わず「軽目焼き」となったと想像します。
次に、かるめは、かるめらの省略語です。
これで一通り言葉の意味が説明できました。
さて、今回のテーマのおもしろいポイントをこれから言いますね。
「キャラメル」と「カラメル」と「かるめら」と「かるめ」。
実は、これらの言葉の語源は全て同じポルトガル語の“caramelo” なのです。
昔、私は、製菓学校で、砂糖の特性の授業の時、「カラメルとかるめら」の話を聞きました。
その時に、和菓子の講師は「かるめら」の“る”を発音する度に何度も何度も入歯がはずれていました。
その講師は「カラメル」は発音できるのに、「かるめら」だと入歯がはずれていました。
私は、お蔭で、その日の授業の内容を全く覚えておりません。
どうして、「カラメル」は発音できるのに、「かるめら」だと入歯がはずれてしまうのだろう?と言う事で頭がいっぱいになったからです。
それ以外覚えてないのです。
また、その授業の時からずっと「カラメルとかるめらは、砂糖つながりで、発音も似過ぎているから、元々同じ語源ではないのか」と薄っすらと思いながらも調べもせずに今日まで来てしまいました。
それが、今回この記事を書く為に調べてみると、あっけなくその謎が解けました。
そもそも、キャラメルもカラメルも“caramel” と書きます。
同じ語源で、全く同じ字を書くのに、発音と意味が異なっているだけなのです。
さて、全部の言葉の意味がわかった所で、ようやく今回のお菓子をご紹介します。
今回は「かるめら」を作ります!「おや、かるめらかい? かるめらは難しいよ」と思われた方は、昭和20年代以前の生まれの方だと思います。
かるめらは、砂糖と水を火にかけ重曹で膨らませた、駄菓子です。
更に言うと、作るのが難しく失敗しやすい菓子です。
アニメ『じゃりん子チエ』では、カルメラ兄弟が登場し、カルメラ作りを失敗する舎弟を兄貴がどつくシーンがあり、カルメラ焼きを膨らませる事が難しい事を日常の一コマとして、さらりと伝えています。
私は、まだ一度もかるめらを作った事がありませんが、古い和菓子職人から難しいと言う話は聞かされていました。
初めは失敗して当然と言われます。
皆がこれ程までに難しい、難しいと言うと、緊張してきます。
では、作ってみましょう。
レシピ
材料
- ザラメ・・・大さじ 4杯
- 水・・・大さじ 1杯
- 重曹・・・小豆大1つまみ
- おたま、割りばし2組(輪ゴムでしばる)
- 温度計、ぬれ布巾
step
1材料の確認
材料はこんな感じです 。
あと、水。
加熱終了のタイミングを目で判断するのは、最初は、まず無理!です^^;
なので温度計もあった方が失敗しにくいです。温度計があっても失敗する程難しいですので。
※おたまは、銅製の物は熱伝導が良く、1か所が焦げる心配が少ないので理想的。
なければ普通のステンレス製でもOK。弱火でね。
step
2ザラメの準備
ザラメ 大さじ4杯。
※グラム換算する場合、大さじ1は通常15gですが、
ザラメの場合は13gで換算して下さい。(比重の違い)
step
3おたまに材料を入れる
ザラメと水を合わせ、おたまに入れます。
step
4コンロを用意
今回は、家庭用コンロを使います。ぬれ布巾と重曹を用意しておく事も忘れずに。
かるめらは時間との勝負なので。
step
5火にかける
火は絶対弱火!更に、火から離し、温度を調節しながらかき混ぜます。
沸騰する前にザラメを溶かす事がポイントです。
火に近いと弱火でもザラメが溶ける前に沸騰してしまうので注意!
step
6かき混ぜる
ザラメが溶けて透明になり、きれいなコハク色になりました。
だんだん、沸騰してきます。
更にかき混ぜながら加熱すると、どんどん沸騰して泡がたくさん出てきます。
step
7温度を計る
この状態で、まだ99.1℃。
117.5℃
片手は、しっかりおたまを固定、もう片手は、割りばしと温度計を。
125℃までかき混ぜます。
割りばしの代わりに、すりごき棒でかき混ぜたのですが、長さが短く指が火に近くなり熱くてヤケドしそうになりました。割りばしの方がオススメです。
step
8重曹を入れる
125℃になったら火からおろし、一呼吸してから、重曹を入れます。
step
9超スピードでかき混ぜる
すぐに勢いよくかき混ぜます。
白っぽくにごってきます。
どんどんかき混ぜ続けると、少しずつ膨らんできます。
この色の変化を見逃さないで、
最後に中央から割りばしを抜きます。
膨らんで固まってきます。
step
10冷ます
ぬれ布巾の上で1分間置いて、冷やし固めます。
step
11型からはずす
再度弱火にかけ、おたま全体を温めると砂糖が溶け、中身がコロンとはずれます。
出来上がりです!
断面はこんな感じです。
おいしそうにできました\(^o^)/
作った感想
10回失敗しました。(汗)
お味は、材料がザラメだけなので、当然、混じり気のない純粋な甘さです。昔はこの味がさぞかし美味しく感じられたのだろうな・・・と思いつつ、平成生まれの二男(中2)に食べさせると、「旨いは旨い、それなりにね」という感想でした。
道具さえあれば、短時間で作れるので「昔のお菓子だよ~」と、お子様と一緒に楽しまれてはいかがでしょうか?
ご年配へのプレゼントにも懐かしいと喜んで頂けると思いますよ。